ありがたいことに、その後、企業の制服をデザインさせていただく機会にも恵まれました。なかでも思い出深いのは、JALの客室乗務員(CA)の制服かしら。依頼された時、先方の偉い人たちは「CAがどこにいるか一目でわかる制服にしたい」と奇抜な色を希望されましたが、これに私は反発を覚えました。着るのは現場のみなさんなのだから、機能性や着心地を優先するべきだと主張したのです。

しかし現場のCAの方たちが私のデザインを強く希望してくださったので、それが何より嬉しくて、私の好きにさせていただくという条件でお引き受けしました。

実際に狭い機内で彼女たちの動きを体験したところ、想像以上に重労働。そこで、織組織のシワになりにくい生地を一から開発し、動いてもシルエットがきれいに出る制服をつくりました。驚いたのはその8年後、2004年に制服をリニューアルする際、CAのみなさんが再び私を指名してくださったこと。デザイナー冥利に尽きる、素晴らしい思い出です。

長く服づくりをしてきて確信しているのは、日本の女性は世界の中でもとりわけ美しいということです。だから、みなさんにはもっと自信を持っていただきたい。小柄でもふくよかでも、どんなに年を重ねても、その方に似合う服が必ずあります。

私は一貫して、店のスタッフたちに「お客さまには嘘をついてはダメ」と指導してきました。試着して似合わなければ似合わないと伝え、本当に似合う服を勧めてほしいと。私が商売人の娘だからでしょうか。お客さまには絶対に損をさせたくない、というのが私のポリシーでした。

 

『yoshie inaba』(著:稲葉 賀惠/講談社)