終点を考えている暇はない
仕事における原動力は、ひとえに仲間です。私は正直な人が好き。立場に関係なく何でも言いたいことを言い合って、売上が伸びればビールで乾杯! そんな仲間意識が、明日への意欲に繋がっていました。
ただ、ずっと仕事一筋で生きてきましたから、引退後の生活は少し不安です。みなさん私を評価してくださるけど、今まで人に助けられて生きてきたので、自分では何もできないのです。ひとり暮らしで何かあった時に頼れる人はいませんから、これから自分で自分を育てたいと思っています。
まず始めたいのは、スマホの勉強です。認知機能は年々衰えているのに、新しいことを覚えるのは大変。でも、新幹線のチケットを買ったり音声機能でネット検索したり、若い人と同じように使いこなしたいのです。
何か趣味も探したいですね。できれば仕舞を習いたいのですが、難しそうなのでほかのことも考えているところです。
それ以外にも、家の中のいらないものを整理しなきゃとか、いずれ施設に入るべきかとか、気になることはあります。でも今は、お友だちと食事をしたり旅行をしたり……やりたいことが山のようにあるので、終点を考えている暇はないのです。
私のデザイナー人生、人とのご縁のおかげでここまでたどり着きました。時代に恵まれ、並走してくれる企業や職人さんがいたことも幸運でした。
おかげで60年間、仕事を辞めようと思ったことは一度もありません。洋服を好きでいさせてくれた人たちへの感謝を忘れずに、新たな人生も楽しみたいと思います。