愛原実花さんの写真
撮影:本社 武田裕介
水夏希さんのパートナーとして、宝塚歌劇団雪組のトップ娘役を務めた愛原実花さん。2010年に退団した後は、『「スクルージ」~クリスマス・キャロル~』『ラ・カージュ・オ・フォール』など数々の舞台で活躍している。私生活では2023年に結婚し、昨年、第一子を出産。今回、出産後の初舞台として、4月19日から上演されるミュージカル『アニー』のグレース役で仕事に復帰する。愛原さんの父は演劇界に大旋風を巻き起こした劇作家であり演出家の故つかこうへいさん。自らも親となった愛原さんが今回の『アニー』にかける思い、父であるつかさんから受け継いだ演劇への情熱について語っていただいた。
(構成:内山靖子 撮影:本社 武田裕介)

『アニー』の物語に導かれた子育てへの気づき

今回、グレース役として参加させていただく『アニー』は幼いときから大好きだったミュージカルです。ものごころついた頃から、ほぼ毎年のように、母に連れられて観に行っていました。劇場から帰ってくると自分もすっかりアニーになりきって、ベッドの柵に寄りかかって主題歌の『トゥモロー』を歌ったりして(笑)。ある意味、あれが自分の原点と言いますか。お芝居というものの楽しさを『アニー』を通じて知ったのだと思います。

そんな『アニー』の舞台に立てる日が来るなんて、本当に感謝しかありません。おまけに、出産後の初舞台。なにか運命的なものを感じます。

というのも、出産前の私はわりと楽天的な人間だと思っていたのですが、子育てに関しては必要以上に神経質になってしまって。1人っ子として生まれ育ち、それまでずっと独身で過ごしていた自分が38歳で子どもを産んだことも大きかったのでしょう。一瞬でも目を離したら危険を伴うような小さい命を預かっているという緊張感で、「私がこの子を守らなきゃ!」と精神的に追い詰められて。「ああしなきゃ、こうしなきゃ」と、すべて先回りして、石橋を叩きながら子育てをしていたようなところがあったのです。

愛原実花さんの写真
 

それが、『アニー』の台本を読んだとき、もう少しおおらかに子育てをしてもいいのだと気づかされたのです。孤児院に預けられたアニーには血のつながった親はいませんが、それでも周囲に支えられながら、自分の力でポジティブに道を切り開いていく。そうか、子どもには本来こうしたたくましさが備わっているのだと、肩の力が抜けたと言いますか。母親となって再びアニーから勇気と元気をもらえたことで、子育てに関しても精神的にとってもラクになりました。