河合は並みの俳優ではない
第1回で七実によるこんなナレーションがあった。軽く明るい口調だった。このドラマの伝えたいことを集約していた。
「家族の死、障がい、不治の病。どれか1つでもあれば、どこぞの映画監督が世界を泣かせてくれそうなもの。それ全部、うちの家に起きてますけど」
試練が家族に悲劇をもたらすわけではないということ。家族の不幸は不和やトラブルが招くものだろう。
河合は七実に成りきっている。七実はもとから家族を愛していたが、耕助が逝ってから、より家族を大切にするようになった。父娘で口論し、七実が「パパなんて死んでまえ!」と言った直後、耕輔が亡くなったからである。
口には出さないが、この一件を七実は酷く後悔している。それを河合は目の動きだけで表現する。映画界での評判どおり、並みの俳優ではない。

第4話 場面写真 七実の友達、天ヶ瀬環(左・福地桃子)は、母がマルチ商法にハマって「マルチ」と呼ばれ、同級生から遠ざけられている(『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』/(c)NHK)