振り向かないまま、かすかに微笑んだ鳥山

動揺する瀬川でしたが、頭を下げ、夫・鳥山と話をさせてもらう了解を奉行から得ます。そして鳥山の後ろから

「旦那様…。私は決してよい妻ではございませんでした。どこまで行っても女郎癖の抜けぬふるまいは、お心を深く傷つけたことと存じます。にもかかわらず、何でも望みをかなえてくださった…。今ここに至っても!」

と感謝を伝えた瀬川。対して、ゆっくりと面を上げた鳥山は、

「そなたの望みは何であろうと叶えると決めたのは、私だ」

とぼそりと告げます。その言葉を聞いて涙を浮かべた瀬川。

「私は…ほんに幸せな妻でございました!」

と今一度、鳥山に向けて深々と頭を下げます。

その声を聞いた鳥山は、瀬川の方を振り向くことなく、かすかに微笑むのでした。