友人たちに励まされて

つげ義春さんの漫画を何度も読み直しながら頑張って作業を進めていたが、途中で挫折の誘惑に負けそうになること数知れず、最初に思いついた漫画は完成には至らなかった。理由は体力的なものだけではなく、自分の思い描いている世界観をいっぺんに仕上げられないもどかしさと、頭の中ですでに出来上がっている完成形をイメージするだけで満足してしまうからだった。

しかし、この世がどんな世界かも知らず生まれてきてしまった息子を見ると、そんな利己的な理屈を考えて納得している場合ではなかった。

周りの友人たちにも励まされてやっと仕上げた一作目を、母が日本から送ってくれた少女漫画誌の新人賞に応募して、かろうじて努力賞にひっかかったのをきっかけにデビューが叶った。

たまたま青年誌から配属されたばかりの編集者が私の原稿を見つけて、送り主がイタリアのフィレンツェに住んでいるとわかり、その漫画誌でまもなくフィレンツェを舞台にした内館牧子さん原作の連載が始まるのにちなんで、フィレンツェ暮らしのエッセイ漫画という仕事をいただいた。