覆った裁判所の判断

「人生設計はすっかり無に帰しました」。23年5月、男性は最高裁で訴えた。免職後、しばらくは知り合いのツテをたどって運送会社で重労働をこなし、今はアルバイトで収入を得ていると明かした。

訴えは届かなかった。最高裁は翌月、退職金支給を認めた一、二審の判断を覆し、全額不支給は妥当とする判決を言い渡した。

<『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』より>

悲惨な事故が起きるたび、法改正による厳罰化が繰り返されてきた飲酒運転。宮城県も高校生3人が犠牲になった05年の事故を機に、条例制定など県をあげて根絶に取り組んできた。

県教委も男性が事故を起こす約9カ月前、各学校に1通の文書を配っている。そこには教員による飲酒運転の多発を「極めて遺憾」とし、各教員に向けて「今後はより厳格に対応することとします」と明記されていた。

注意喚起がされていた中で飲酒運転し、事故を起こしたことを最高裁は重くみた。「約30年間にわたり誠実に勤務し、反省していることを勘案しても(処分は)社会観念上著しく妥当性を欠いているとはいえない」と断じた。