〈嫉妬の危険性〉

山本: 最初は嫉妬心を、社会的公正さや正義を求めるムーブメントを引き起こすパワーになると考えていました。でもこの本を書いていくうちに、移民へのバッシングなど差別の問題にこの嫉妬心がスイッチになっている可能性に気づいたんです。

オーストラリアの人類学者ガッサン・ハージが「移動性への妬み」と呼ぶ現象があります。自分の人生が停滞していると感じる中で、移民が結婚したり子どもが出来たり、人生のコマを進めているのを見ると耐えがたく感じる。その不満や苛立ちに対して、「移民は不当な利益を得ている」と叫ぶポピュリストが現れると、そこはかとないイラつきに正当性を与えてしまう。

結局、本の最後では嫉妬心をコントロールする手段いくつか並べることにした。「結局(嫉妬を)抑制するのか」という戸惑いがありましたが。振り返ると、政治学の視点で考えてそうなったんだなと思います。

 

現代民主主義 指導者論から熟議、ポピュリズムまで
「嫉妬の感情は私たちが生きている以上、なしにはできない。むしろ平等を掲げる民主主義社会でこそ一層激しくなる恐れがある」と語る山本教授の著書・現代民主主義 指導者論から熟議、ポピュリズムまで (著:山本圭/中央公論新社)