〈私たちの嫉妬とSNS〉
山本: 斉藤さんの本では、2ちゃんねるの話が出てきますよね。その頃はすごく満たされている感じがします。今はSNS社会が嫉妬心を増幅させているように思えるのですが。2ちゃんねると最近のSNSの違いについてどう感じますか?
斉藤: 2chは私のネット世界への最初の扉で、それだけですごく満たされていたんです。でもしばらくすると「もっと」という欲が出てきて、mixiやアメブロなど広い世界を見るうちに目立ちたい欲が膨らみました。アメブロではランキングがついて、読んでもらうだけでは満足できなくなり、上位に入りたいという欲が出てきて。どんどん欲が膨らんでいきました。
⚫︎「下方嫉妬」とは?
山本: 嫉妬には2種類あると考えていて、一つは「上方嫉妬」。もう一つが「下方嫉妬」で、自分より劣位にある人、若手や駆け出しに向ける嫉妬心です。アリストテレスも「自分が苦労して得たものを他人が簡単に手に入れる時に芽生える感情」というような事を言っています。
僕らは氷河期世代の出口あたりで、若い人たちが売り手市場でひょいっといい就職をすると「えー」と思ってしまう。この「下方嫉妬」はかなりめんどくさい感情だと思うんですが、どうですか?
斉藤: 私よりも遅くデビューしたエッセイストがXで大きく拡散されると、最初は「面白かった」「応援してます」と善い人でいたいので協力するんですが、その投稿が自分の6000ビューに対して3万ビューも読まれると「もうこれ以上発見されないで」と思ったり(笑)業界全体が盛り上がれば自分のためにもなるのに、本当に情けない気持ちになります。