山本: 我々はまだ40代。60代になると別の形の嫉妬が出てくるかもしれませんね。斉藤さんは嫉妬心を爆発させるスタイルでいくんでしょうか。
斉藤: 人とつながって生きていく限り嫉妬は消えないと思うので、折り合いをつけて飼いならしていくしかないですね。嫉妬しすぎないように努力はしますが、諦めている部分もあります。
山本: 斉藤さんはXで嫉妬心を積極的に書いてきましたよね。嫉妬が怪物化する前にポンと出すのは、悪くない付き合い方だと思います。嫉妬は自分を破滅させる危険もあるので、何らかの手当ては必要で、小さいうちに笑える範囲で出すというのは良いテクニックかもしれません。
僕もこの本を書くとき、嫉妬心は悪徳と言われますが、人間らしさ、滑稽さも含めた感情だと思い、全否定せず「嫉妬する私もいいじゃない」というスタンスで向き合いました。
斉藤: 嫉妬するということは「超えたい」という気持ちを生み、原動力にもなります。それがあったからここまで来られたという気持ちもあります。
山本: 60代になれば、本当になりたかった姿が見えてくるかもしれない。40代は「まだできる」と「もうできない」の間で難しいですね(笑)
斉藤: もうしばらくもがくしかないですね(笑)
〈編集後記:嫉妬と向き合う中で見えてきた「生きる知恵」〉
山本教授は、嫉妬が「引き下げる力」として働く危険性を指摘しつつも、それを全否定するのではなく、人間の持つ普遍的な感情として受け入れるスタンス。一方で斉藤さんは、嫉妬を「原動力」と捉え、それを飼いならしながら生きていくことの現実的な知恵を語られました。社会的な側面、ジェンダーによる違い、年代による変化など、多様な視点から語られた今回の「嫉妬対談」。読者の皆さんも自分自身の中にある嫉妬心と向き合い、それと共存していくヒントがあるのではないでしょうか。記事と動画、あわせてお楽しみください。
嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する(著者・山本圭教授/光文社)
嫉妬感情にまつわる物語には事欠かない。古典から現代劇まで、あるいは子どものおとぎ話から落語まで、この感情は人間のおろかさと不合理を演出し、物語に一筋縄ではいかない深みを与えることで、登場人物にとっても思わぬ方向へと彼らを誘う。それにしても、私たちはなぜこうも嫉妬に狂うのだろう。この情念は嫉妬の相手のみならず、嫉妬者自身をも破滅させるというのに――。(「プロローグ」より)政治思想の観点から考察。
褒めてくれてもいいんですよ?(著者・斉藤ナミ/hayaoki books)
「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、笑い飛ばしてやってください
「人気者になりたい!」「愛されたい!」が暴走して失敗だらけの私を「書いて、ネタにして、笑ってもらうこと」だけが救ってくれた。
作家・岸田奈美推薦! 2ちゃんねる・ブログにルーツを持ち、noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞したSNS時代の新星・斉藤ナミがすべてをさらけ出すデビューエッセイ集。
装画は気鋭のイラストレーター・一乗ひかる氏が担当。