認知機能にも影響が!?
堀川 血液透析に関してですが、黒部市民病院(富山県)の吉本敬一医師が、病院内外で死亡した透析患者(血液透析・腹膜透析)の死亡時の状況を分析した論文を発表なさっていて、その中に〈35.6%の患者さんが死亡時に認知症を有していた〉との記述がありました。血液透析では、シャントによる過剰血流が認知機能を低下させることが明らかなんですよね。
森 脳の血流が影響を受けるためだろうと言われています。台湾で行われた大規模な統計調査からも、血液透析の患者さんは脳卒中リスクが高まること、とくに高齢の患者さんに顕著であることもわかっています。
堀川 患者の側も、自分が受ける治療について知識を持つ必要がありますね。ところで、日本の透析患者数は22年から減少に転じましたが、高齢の患者さんは増加し続けているそうです。とくに女性が高齢になってから透析を始めるケースが多いのは何か要因がありますか?
森 女性の体は女性ホルモンに守られているので、閉経前までは動脈硬化など生活習慣病の進展が男性より緩やかです。ところが閉経して女性ホルモンが減少すると、急に動脈硬化、高血圧、糖尿病などが増え、それらが透析の原因となる腎硬化症を誘発するのです。
これらには自覚症状がありません。とくに腎臓は透析が必要になる直前まで症状が表れないので、普段から定期的に健康診断を受けて、生活習慣病はもちろん、クレアチニンなど腎臓の数値も気にしてほしいと思います。症状が出る前に機能低下に気づいて治療を開始するのが唯一の予防法です。