ノンフィクション作家の堀川惠子さん(左/撮影:MAL)と、「腹膜透析」を推進する医師の森建文さん(右/写真提供:森さん)
腎臓の機能が低下した患者を生かすための治療、人工透析。堀川惠子さんは、「血液透析」を受け病と闘う夫に寄り添い続けました。しかし病状の悪化により命綱であるはずの透析は耐えがたい苦痛を伴うようになり、夫は透析中止を決断。苦しみながら他界しました。それから7年、透析医療のあるべき姿を求めて取材を重ねた堀川さんの著書『透析を止めた日』が、話題を呼んでいます。取材で出会った森建文さんは「腹膜透析」を推進する医師。その治療法のメリットとは。(構成:菊池亜希子)

中編よりつづく

家族だけでなく社会を巻き込む医療に

堀川 在宅ケアの場合、家族だけでなく、訪問看護師さんやヘルパーさんも巻き込んで、介護として考えていくことも大事ですよね。実は、闘病中の私の父が本音を漏らすのは、母でも私でもなく、ある訪問看護師さんなのです。

彼女にだけは私たちに言わないことも話すから、わざと二人きりにして、後で彼女にこっそり聞いています。支える家族の気持ちは、移り変わるもの。私自身、夫の終末期には感情が凄まじくアップダウンしました。

何が何でも生きてほしいと願ったり、このままラクに死なせてあげたいと思ったり。家族だけでどうにかしようとしないで、いろんな人がかかわれる仕組みがあるといいですね。

 腹膜透析を広めていくには、まさにその仕組みが大事です。日々のケアの手助けは、家族でなくてもいい。

訪問看護師さん、ヘルパーさん、介護施設のスタッフの方々……多くの方に腹膜透析を理解してもらって協力いただければ、家族の助けが得られない場合でも、施設に入所していても、腹膜透析を続けることができるのです。そういう仕組みを作る活動にも力を入れています。