手に入れたい、手放せない理由は

ではそもそも、私たちはなぜモノを手に入れたい衝動に駆られるのでしょうか。あるいは、使わないと理解していても手放せないのはなぜでしょうか。

まず、モノを手に入れたいという意識のなかには、動物がエサの不足する時期や冬眠に備え、エサを隠す「貯食行動」と同じ心理が働いていると考えられます。人間でいうと貯金のようなもので、その背景には「リスクへの備え」があるのです。

近年多発する自然災害の影響で、日本では非常時の備えに対する意識が浸透してきました。非常食や水、簡易トイレなどをある程度まとめて保管しているご家庭も多いのではないでしょうか。

老後のための貯金も然り。これは当然ながら、リスク回避のためであり、ためこみ行為ではありません。

ただし「モノがあると安心できる」という心理は、モノを手に入れるという行動と密接につながっているのも事実。必要な時にないと困る、だから買ってためておくという行動が、時として過剰になることもあるのです。

そのほか、「私はこれを持っている」という満足感や高揚感を得たいがために、モノを手に入れるということもあるでしょう。ブランド品や流行りのモノを手に入れたいと思うのはこれに当たります。

そして、「このチャンスを逃すと手に入れられない」という強迫観念も要因になりがち。旅先でお土産や限定品などを目にすると買わずにいられない、という人は少なくありません。セール品など得した気持ちになるモノはその最たるもの。必要ないのに買ってしまうというケースが多々あります。

ある高齢者のお宅では、押し入れから大量のトイレットペーパーが出てきたことがありました。聞くと安売りしていたから買っておいたと言います。

しかし、長い間使わずしまわれていたため、紙がパサパサに劣化し使えなくなっていました。安く買えたどころか、結果はお金が無駄になったわけです。皆さんも、思い当たることがあるのではないでしょうか。