(イラスト:ナカミサコ)
片づいた空間は安全で暮らしやすく、気持ちのいい場所とわかっていても、なぜそれを実践できないのか。その原因を心理学の専門家が解き明します(構成:島田ゆかり)

救急隊が中まで入れないという事例も

モノやごみが屋内や屋外に積まれることにより、悪臭や害虫の発生、崩落や火災等の危険が生じる「ごみ屋敷」。環境省の「令和4年度『ごみ屋敷』に関する調査報告書」によると、過去5年間のごみ屋敷事案は5000件を超えています。

ごみ屋敷とまでいかなくとも、部屋にモノが多すぎて救急隊が中まで入れないという事例もありました。これでは快適に暮らせないどころか、安全な場所ですらありません。

今や、片づけに関して問題を抱えている人は20人に1人と言われています。実はそのなかには、「ためこみ症」という心の病気が原因のケースも。これはうつ病や強迫症、ADHDなどと並ぶ精神疾患のひとつで、2013年にアメリカ精神医学会の診断基準に新しく加えられ、19年にはWHOの国際疾病分類にも加えられました。

ためこみ症の特徴は、日常生活に支障をきたすほど、モノをためこんでしまうこと。たとえば、浴室にモノが積み上げられていたり、ダイニングテーブルに食料品やチラシ、書類などが積まれて食事ができなかったり、ベッドの上がモノに占領されていて寝られなかったり。

モノに対して強い思い入れがあり、処分すると自分の一部を失うような感覚に襲われることもあるのです。