「朝起きて部屋がスッキリしていると心が潤うのを感じるでしょう」(やましたさんの沖縄の家/撮影:高野大(フォトアートたかの))

老後の悩みも解消、「おトク」な効果も

高齢期の家庭については、「親が実家にモノを溜め込んで困る」という子世代の悩みと、「子どもが勝手に捨てて困る」という親世代の悩み、両方が聞こえてきます。

戦後の苦難を生きてきた世代にとって、モノを持つことは成功の証。身の回りのモノはすべてその証拠品であり、自分を守る「砦」。砦の壁が高く強固なほど、子どもたちは壊してでもなかに入ろうとするでしょう。勝手に壊されれば、砦の主はさらに強く防御したくなる。

そんなイタチごっこを防ぐには、出入り自由な扉をつくって「こんなふうだから安心して」と見せられる状態にするのがいちばんの近道。つまり家庭でも、ある程度の外交努力と交渉術が必要ということですね。

大がかりな断捨離でなくてもいいのです。前述した一点突破の方法で台所の引き出し1つでもいい、それを子に見せながら「上の棚のほうは手が届かないから手伝ってほしい」と声をかける。昭和レトロな洋服やアクセサリーを「フリマに出してみてくれる?」と孫に頼んでみてもいいですね。

「モノを始末する気持ちはある、今の状態はこう」と示すだけでも子の心配や干渉は少なくなるはず。そうして砦が開かれ、空間がオープンになると、人の出入りも活発に。友人や近所の人に「遊びに来て!」と声をかけやすくなるでしょう。「人との縁」が生まれるという大きなメリットも見逃せません。