夫婦の在り方

実は私自身が発達障害者なので、見ていて辛くなる部分もあった。就労支援で紹介される仕事は、単調な作業に限られるのか? 支援途中に連絡が途絶えたまま、自宅アパートで孤独死した人の話も出る。「お宅には子どもは何匹いますか?」等と口にする相談者。面接リハーサルや、就活のために様々な「検定」を勧められる場面を見て、「就職していくのはこんなに大変なのか」と、呆然とした。それぞれの能力のばらつきもありすぎる。これをひとまとめに就労支援することは、そもそも無理だろう。

そんな厳しい現実が続くノン・フィクションの合間に、自然に挿入された2つの家族の「物語(ドラマ)」には、ほっとさせられた。

発達障害の夫と息子を支える妻の朱美と母の貴和子は、彼らの最高の理解者であり、支援者だ。現実として発達障害者が1人で生きていくことは難しく、できるなら理解・支援してくれる家族と暮らすのが一番いい。

しかし、こんなふうに優しく理解してくれる家族に巡りあうことは稀だろう。生みの親ともうまくいかずに家出したり、引きこもりになったりするケースは後を絶たない。はじめと朱美の関係も、「夫婦と言うよりお母さんと子どものよう」と批判されるかもしれない。しかし彼女のように「人の面倒を見ることに喜びを感じる」人もいる。こういう夫婦の在り方も「あり」なのでないだろうか。