ほんとうの正義

正義についての考えは、アンパンマンが最初に絵本『あんぱんまん』になった時のあとがきに書いています。

まず、そのあとがきを読んでみてください。

『新装版 わたしが正義について語るなら』 (著:やなせたかし/ポプラ新書)

 

子どもたちとおんなじに、ぼくもスーパーマンや仮面ものが大好きなのですが、いつもふしぎにおもうのは、大格闘しても着るものが破れないし汚れない、だれのためにたたかっているのか、よくわからないということです。

ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そしてそのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えませんし、また、私たちが現在、ほんとうに困っていることといえば物価高や、公害、飢えということで、正義の超人はそのためにこそ、たたかわねばならないのです。

あんぱんまんは、やけこげだらけのボロボロの、こげ茶色のマントを着て、ひっそりと、はずかしそうに登場します。自分を食べさせることによって、餓える人を救います。それでも顔は、気楽そうに笑っているのです。

さて、こんな、あんぱんまんを子どもたちは、好きになってくれるでしょうか。それとも、やはりテレビの人気者のほうがいいですか。

『あんぱんまん』(フレーベル館刊)より

これを書いたのは1973年ですから、もう今から30以上前ですね。最初に「あんぱんまん」を書いた時はまったく自信がなくて、子どもにはウケないだろうと思っていました。というのは、あんぱんまんの見た目があまりかっこよくないんですね。なにせ顔がアンパンだからね。特に最初に書いた「あんぱんまん」はぼろぼろマントだし、かっこよくない。だから読者にはウケないだろう、でも、餓えた子どもを助けることが一番大事なんだと思って書いたんです。