餓えるのがいかに辛いか
追いつめられれば人間でもなんでも食べたくなる。だから漂流した人が餓えた時に死んだ人を食べるという話を聞いても、納得できるんだよね。少しずつ削って食べたそうですけれど。自分が餓える体験をしてみて、餓えるのがいかに辛いかよく分かりました。
日本に帰ってみても、その当時の昭和20年代は本当に食べるものがなかった。毎日食べていくのが大変な時代でした。戦争が終わって、アメリカのスーパーマンやスパイダーマン、いろんなヒーローがいっぱい出てきました。正義の味方だといって、どんどん人気が出た。ところが彼らは、餓えた人を助けに行くとか、そういうことは全然やらないのですね。
スーパーマンにもスパイダーマンにも敵対する悪い奴がいて、それをやっつけると正義が勝ったということになる。例えばウルトラマンは怪獣をやっつけます。怪獣は地球に害を与える奴だから、怪獣をやっつけると正義が勝ったということになる。
それからスーパーマンはやたら派手派手しい服を着てニューヨークを飛び回っています。その姿が変に思えたんだよね。餓えた子どもには何もやらないで自分のことだけアピールするコマーシャルみたい。
現在も、バングラデシュやエチオピア、ブラジル、いろいろな国にストリートチルドレンや飢え死にしている子どもがたくさんいます。どこかの国で戦争が起きると、戦争している国同士は両方正義だ、悪い奴をやっつけると正義が勝ったのだと言って戦っているけれど、子どもたちのことは見てやらない。そうして子どもたちは次々に死んでいますね。
だからぼくが何かをやるとしたら、まず餓えた子どもを助けることが大事だと思った。それが戦争を体験して感じた一番大きなことでした。