どっちが正義でどっちが悪?
戦争で感じた大事なことがもう一つあります。それは、正義というのはあやふやなものだということです。
ぼくが子どもの頃は、天皇は神様である、天皇のために忠義を尽くし、日本を愛しなさいと教えられていました。子どもですから、先生が言えばその通りだろう、それが正しいのだと思っていました。
21歳で戦争に行った当時は「天に代わりて不義を討つ」と歌う軍歌がありました。「この戦争は聖戦だ」と勇ましく歌う歌です。ぼくも兵隊になった時は、日本は中国を助けなくてはいけない、正義のために戦うのだと思って戦争に行ったのです。
でも、聖戦だと思って行った戦争だって、立場を変えてみればどうでしょう。
中国の側から見れば侵略してくる日本は悪魔にしか見えません。
そうして日本が戦争に負け、すべてが終わると日本の社会はガラッと変化しました。
それまでの軍国主義から民主主義へ。それまでは天皇が神様だと言っていたのに、急にみんな平等だ、民主主義だと言われるようになりました。