エネルギーを失ったアンパンマンは…

作者のぼくも自信がなくて、これはダメだと思いました。

この最初の絵本でぼくが描きたかったのは、顔を食べさせて顔がなくなってしまったアンパンマンが空を飛ぶところです。

(イメージ写真:stock.adobe.com)

顔がないというのは、無名ということです。

顔パスという言葉がありますね。この世界は顔で通用するところがあります。政治家もそうだし、タレントもそう。自分の顔を売って、それで生活するところがあります。顔売り商売ですから、プライバシーがないと騒ぐのは間違っている。顔を売った以上はプライバシーは失います。覚悟しなくてはいけません。

普通の人は無名です。顔は知られていません。

顔がなくなってしまったアンパンマンは、エネルギーを失って失速します。

ぼくはこの部分が描きたかったのです。

でも、不評でしたから、しばらくアンパンマンを描く機会がありませんでした。その代わりほかの作品をどんどん書いていました。『いねむりおじさん』や最初にお話しした『チリンのすず』などの絵本をたくさん創作しました。