フランケンシュタインが下敷きに
でも、アンパンマンへの愛着はなぜか残っていて、自分が編集長をしていた雑誌「詩とメルヘン」に大人向けの『熱血メルヘン怪傑アンパンマン』の連載を始めました。
物語のはじまりは、嵐の夜にアンパンマンが登場するシーンです。これは映画「フランケンシュタイン」が下敷きになっています。そして、もうひとつ、メーテルリンクの『青い鳥』も重なっています。『青い鳥』の中で、チルチルとミチルが帽子のダイヤモンドをまわすといろんな妖精が登場するところがあります。それがぼくには面白くてたまらなかった。光の精や水の精はいかにもという感じでしたが、パンの精というのも出てきてびっくりしたのですね。
このパンの精が幼児体験としてインプットされて、フランケンシュタインと合体してアンパンマンになったのだと思います。
でも、後から書いた漫画のアンパンマンはちょっと違っていて、生命の星がブラックホールから逆に飛び出して、ジャムおじさんの工場の煙突に飛び込みます。アニメ版の誕生は、この漫画の方のストーリーから作りました。
いずれにしても超自然の力が偶然に作用して、アンパンマンに生命が宿ります。
最初に平仮名で書いていた「あんぱんまん」をなぜ片仮名にしたかというと、ぼくの子どもの頃のパン屋さんは全部「パン」で、それが強烈に記憶されていたのですね。「ぱん」だと「まんじゅう」という食感の気がします。
アンパンは日本人が発明したものです。いかにも日本的で、かたちもいいし、ファストフードにもなればスナックみたいにも使える。おやつになります。ぼくは子どもの時にアンパンが好きでした。そうやってアンパンマンが誕生しました。