最初に認めてくれたのは…
アンパンマンを最初に認めたのは3歳から5歳の幼児です。この世に生まれたばかりで、まだ文字をあまり読めず、言葉もおぼつかない赤ちゃんです。なんの先入観もなく、欲もなく、すべての権威を否定する、純真無垢な魂を持った赤ちゃんは、冷酷無比の批評家です。
幼児は気に入らない絵本は放り投げます。絵本評論家が難しい理論を言っても通じません。好きか嫌いか、明確に判定します。しかも今年の幼児と来年の幼児は違う。たえず入れ替わっています。
この読者に対して、大人はどうすればよいのか。甘い赤ちゃん言葉で「かわいいウサちゃん」くらいのところでお茶をにごしているのではないか。
アンパンマンがなぜウケるのか、今でもぼくには分かりません。でもぼくは真剣に考えるようになりました。そして自分のメッセージをしっかり入れることにしました。
「正義とは何か。傷つくことなしには正義は行えない」
その頃、絵本はどんどん芸術的になっていました。若い女性に人気が出て、絵本作家になりたい志望者が増えたり、絵本の学校ができたり、大学に絵本研究会ができたりした頃です。
※本稿は、『新装版 わたしが正義について語るなら』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
『新装版 わたしが正義について語るなら』 (著:やなせたかし/ポプラ新書)
正義とは何で、正義の味方とはどのような人なのか。戦争を生き抜き、国民的ヒーロー「アンパンマン」を産みだしたやなせたかしが、その半生を通じて向き合った「正義」のあり方とは。
混迷の時代に生きる勇気をもらえる、やなせ流の人生哲学。