アニメ『それいけ!アンパンマン』の声優を務める戸田恵子さん(右)とドラマ『あんぱん』の脚本を手がける中園ミホさん(左)(撮影:清水朝子)
この春スタートしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』のモデル、絵本作家のやなせたかしさん。戦争や家族との死別など、多くの困難にあっても絶望せず、個性的なキャラクターを通じて子どもたちに伝えたかったメッセージとは。アニメ声優を務める戸田さん、ドラマの脚本を手がける中園さんが、その人柄について語ります(構成:内山靖子 撮影:清水朝子)

やなせさんとの不思議なご縁

戸田 『あんぱん』、毎日楽しみに拝見しています。「やなせ先生が朝ドラになる!」って、アニメの『それいけ!アンパンマン』に携わっている私たちも、すごく期待しているんですよ。

中園 アンパンマンの分身のような戸田さんにそう言っていただけると嬉しいです。

戸田 今回はなぜ、やなせご夫妻の人生を朝ドラで描こうと思われたんですか?

中園 実は私、子どもの頃から、やなせさんとは不思議なご縁があるんです。10歳のときに大好きだった父が亡くなって悲しみのどん底に沈んでいたときに、母が『愛する歌』という詩集を買ってきてくれて。

戸田 先生が47歳のときに初めて出版された詩集ですね。

中園 ええ、その中に「たったひとりで生まれてきて/たったひとりで死んでいく/人間なんてさみしいね/人間なんておかしいね」という詩が載っていて。その言葉を目にしたときにすごく救われて、やなせさんにお手紙を書いたんです。そうしたら数日後、お返事が届いて。15歳くらいまで文通していました。

戸田 いかにも、やなせ先生らしいお話ですね。先生はどんなことでも「明日にしよう」とは考えない。「いつかはない」と、おっしゃって、その時々で自分ができることに120%の力を注いでいらっしゃいましたから。