寛のセリフに共感

寛は往診途中に倒れてしまいます。嵩は東京の美術学校で卒業制作に取り組んでいる最中でした。嵩は危篤の報せを聞いても高知に戻らず、寛のためにも卒業制作を完成させる道を選びます。

(『あんぱん』/(c)NHK)

寛が亡くなった後の回想シーンで、危篤状態の寛が「嵩は帰ってこなくていい」と話していたことが明かされます。この時は、本当に息を引き取る直前という設定だったのであまり声を出さないように演じていました。

「中途半端なことをしたら殴ってやる」という寛のセリフは理解できます。もし自分に息子がいたとしたら、それくらいの気持ちで生きてほしいと思うから。

人生って自分の思い通りにならないことの方が多くて、年を重ねて、ふと自分が今まで辿ってきた道を振り返ったときに、意味のなかったことの方が、実は人生において大切なことが詰まっているんじゃないかと思うんです。自分に息子がいたら寛と同じことを言いますね。中途半端に逃げてしまうことはいちばんよくない。うまく結果が出なくても、ずっと続けること。そこに価値がある。結果ではなくプロセス、そこに向かっていくまでの気持ちが大切です。そういう思いを腹の底に置いて、このシーンではセリフを言っていました。