すべてをぶつける千尋

海軍に志願した千尋が駆逐艦に乗ることになり、小倉連隊にいる嵩に会いに来るシーンがあります。千尋が嵩に初めてすべてをぶつける長い場面です。隠していたのぶさんへの恋心や戦争がなかったらしたいことを立て続けにしゃべるので、全部出し切ろうという思いで臨みました。

(『あんぱん』/(c)NHK)

小さい頃から自分を出さなかった千尋が最後の最後に兄貴に全てをぶつけるシーンではあるので心にくるものはありました。嵩として匠海さんもすべて受け止めてくれるだろうと思っていました。匠海さんとは、目線とかカメラワークのことは話しましたが最小限の打ち合わせにして、その場で生まれるもの、爆発力を大事にしました。

千尋は感情的になると、セリフが方言に変わるので、そこは難しかったですね。千尋が気持ちをぶつけるときに、涙を流したほうがいいのかは、匠海さんに相談しました。兄弟として別れるなら千尋はすべてをぶつけて涙を流すのかなと思ったんですが、軍人として会うのであれば、涙を流さずに「行ってきます」を言うだろう、という話をしました。

テストでは僕は涙をボロボロ流したんですが、OKになったシーンは涙を流していません。どちらがいいのかと考えていたら、匠海さんが「もしやりたかったら監督にもう1回お願いする」と言ってくださいました。結局、監督がOKしたものがすべてだろうということでやり直しはしませんでした。

ただ、これで100%よかったのかという不安はあります。放送されて皆さんの反応でよかったと感じるのかもしれません。最高のチームで挑んで全身全霊でやらせていただいたので、みなさんに届けばいいなと感じています。