犯人が14歳の少年だった衝撃
森 宮﨑の事件より10年近く後になりますが、97(平成9)年に発生した、神戸市須磨区で2人の小学生が犠牲となった神戸市連続児童殺傷事件。ここでも犯人の少年が「酒鬼薔薇聖斗」と名乗り、犯行声明文をマスコミに送ってきました。劇場型犯罪であると同時に、犯人が14歳であった衝撃、そして少年法が議論された事件の典型例としても注目を集めます。この事件がきっかけとなり少年法が改正され、刑事罰の対象年齢が16歳から14歳へと引き下げられました。
青木 僕はこの事件のとき韓国のソウルに駐在中で、日本にいなかったのです。森さんはまだ『週刊新潮』にいた頃ですよね。
森 ええ。少年の父親にも会いました。加害者の親というのはつらい立場だと感じた記憶があります。ただ、その後、両親が手記を出版し、本人も『絶歌』という本を出した。それらを読むと、彼の性格を作った一端に家庭の問題があったのかなとも感じましたね。
青木 僕も「元少年A」という形で手記を出したのはまずいと思いました。彼は犯行当時は未成年で、少年法で保護される対象だったわけですが、あの本を書いた瞬間に「元少年」から「表現者」となる。厳しく言えば、重大な過ちを犯したけれど保護されるべき「元少年」ではなくなるのです。ならば実名か、せめて実名に近いペンネームで世に問うべきだった。被害者遺族も相当に傷ついただろうと想像します。
森 少年だから数年で社会に出てきて、こうしたことが起きる。罪と罰のバランスが悪すぎる気はしました。
青木 その見方もわからなくもありませんが、少年犯罪に関しては、少し森さんと意見が異なる部分があります。僕は94年に起きた木曽川・長良川事件という少年同士の連続リンチ殺人事件を取材して以来、少年法についてずっと考えてきました。少年だからといってメディアが絶対に顔や名前を出してはいけないと一概に言うつもりはありません。しかし将来の更生の可能性とか、社会や育成環境の責任などを考えた場合、大人と同じように罰すればいいとは思えない。
森 なるほど。何歳までを少年とするかも含め、少年犯罪に対する考え方は人によって分かれますね。酒鬼薔薇事件のときにも、僕の在籍していた『週刊新潮』では、少年の写真に目隠しを入れましたが、『FOCUS』は目線なしの写真を載せた。同じ出版社でも、編集部によってスタンスが違っていました。