安全だけでは楽しくない
佐々木さんが前の職場で入居相談の担当だったときのエピソードを話してくれた。
「子どもが自立し、配偶者を亡くして独居となったとき、人と会話する機会がなくて、『口の中にクモの巣が張りそう』と嘆く人がいました。同居でも、子世帯が忙しくて日常会話がなく寂しいという人も。介護施設にいてもそれは同じ。
ある方の施設には24時間監視するカメラがあり転倒時などに駆けつける方式で、何か起こらないとスタッフとの交流がないケースも。安全を謳っても、ほどほどに人とのコミュニケーションがなければ、人間らしい暮らしとは言えないのではないでしょうか」
設備が整った施設に入りさえすれば万事解決、とはいかない現実。さらに近山さんが言う。