原田 経済的に自立して早期退職をする「FIRE」をされた方もずいぶん取材しましたが、リタイア後の生活ぶりを伺って驚きました。とっとと会社を辞めて自由になったら、南の島で優雅に暮らしているというようなイメージを持っていたんです。
けれど実際は全然違って、時間もお金もできたから誰かの役に立ちたいと、家庭裁判所の調停委員を引き受けたり、塾に通えない子どもたちのサポートをしたり。社会貢献なさる方が多いんですよ。
鈴木 小説のなかの菊子さんも、「自分のためだけに生きるには、一生は長すぎる」と、若い人の起業の手助けをしますよね。私も年齢を重ねてきたせいでしょうか、その気持ち、とてもよくわかります。
原田 私も、小説の執筆をもう少しがんばって、たとえば2冊書くところを3冊にすれば、納める税金が増えて役立てていただけるし、翻訳されれば外貨も稼げる。誰かのためになると思うと、がんばれる気がします。
鈴木 私も新しく何かを始めるのではなく、今自分がしている仕事のなかでお返ししていければと思います。これまでの私は教えていただいたり、助けていただいたり、周囲からしてもらってばかりでした。だからこれからは、自分の周りの誰かに何かをお返ししていきたいです。