音や響きを大事に

西村雄正さん
西村雄正さん(『あんぱん』/(c)NHK)

<方言指導の仕事内容は多岐にわたる。まず、脚本の内容をチェックする。中園さんが書いたせりふには、標準語と土佐弁的なニュアンスのせりふがあるため、間違いがあれば修正。必要に応じて標準語のせりふを土佐弁に直す。脚本完成後は、俳優用に方言のせりふを吹き込んだデータを作る。レッスンを行うだけでなく、撮影にも立ち会う。エキストラの土佐弁指導も行うほか、現場で急に追加されたせりふを土佐弁に直すこともあり、仕事量は膨大だ>

せりふを土佐弁にするとき、翻訳のようにしてしまうと字幕が必要になってしまう。そうなると全国の視聴者がせりふを聞いた時に頭の中にクエスチョンが浮かんでしまいます。演者さんが気持ちよく話せるように、音や響きを大事にしますし、全国の方に通じる方言かどうかはよくバランスを考えています。

中園さんとの直接のやり取りはありません。台本をいただいた時に、土佐弁を濃いめに修正したら、そのままだったので驚きました。全く直されないんです。

中園さんと顔合わせのためにお会いした時に、「私は土佐弁が分からないし、方言指導の仕事をリスペクトしているから、直すところを楽しみにしている」と言ってくださった。すごく救われました。