とうとう化けの皮がはがれた
「結婚してからの彼女は本領発揮でした。義父の貯金で高級外車を購入、海外旅行に着物の新調。散財しているのはわかったけど、義父が許しているのなら、口は出せませんでしたね」
ナツミさんが許せなかったのは、義母の遺した着物を着たり、ジュエリーをつけたりすること。それでも、マザコン気味の夫や義姉が我慢しているので、自分の出番ではないと口をつぐんでいた。
「そんな私の怒りがついに爆発したのが、義母が生前にかけていた孫たちのための簡易保険を、断りもなく勝手に解約したことです。満期の通知をもらって郵便局に行ったら、入れ違いに解約されていたことが判明。郵便局の人も『委任状があったので』と、恐縮しきりでした」
勇気を奮って彼女に抗議したところ、「主人の言いつけで財産整理をしているのよ」とどこ吹く風。
「とうとう化けの皮がはがれたな、と思いました。普通の感覚の人じゃないと思い知らされましたね」
90歳を過ぎて義父に認知症の気配が表れ始めると、夫と義姉にひっきりなしにサポートを要請してきた。「お父さまが暴言を吐くのよ」「勝手に出ていっちゃう」などと訴え、すぐ駆けつけるよう要求する。ナツミさんにまで、「嫁ならお舅さんの面倒をみるべきでは」と言ってくる。
「義父の入院費用の請求書は義姉に送り付け、夫の職場に頻繁に電話してくる。私たちは我慢の限界でした」
94歳で大往生した義父の葬儀は、夫と義姉が仕切り、後妻を喪主にしなかったことだけが、せめてもの意地。最晩年に義父がもらした「結婚なんかしなきゃよかった。僕が思っていた人と違ったよ」という言葉がむなしいと言うナツミさんだ。
夫、義姉は一切の相続を放棄する代わりに、以後は姻戚関係を遮断することで合意、彼女と縁を切ったという。
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誰でも親に長生きしてもらいたいと思う。しかしそれには条件がある。親が経済的にも暮らし方においてもほどほどに自立して、仲良く愛情深い関係が保てるならば、という条件が。なんとも手前勝手なようだが、それが本音ではないだろうか。
とはいえ、そんな親子関係はまれかもしれない。しがらみや軋轢の中で、それでも親子という関係を結んでいくのだろう。