実はカナコさん、2年前の観戦の帰り道、駅までの真っ暗闇の坂道をぞろぞろと歩いていた時、足を滑らせ側溝に落ちてしまった。顔面をしたたかに打ち、血まみれに。痛みに呻いていたら、そばを歩いていた若い男性が救急車を呼んでくれたそう。

「彼の『30代の女性(!)が転倒して出血しています』という声に、情けないやら恥ずかしいやら、でもちょっと嬉しいやら……。以来、これからも鈴鹿でF1の生観戦を続けたいから、転ばない体を手に入れようと、一念発起してトレーニングを始めることにしたんです」

書籍翻訳を生業にしているカナコさん。若い頃から、締め切り前ともなると、食事もそこそこに睡眠を削って、1日15時間以上パソコンの前に座っていることもあったそう。

離婚後に女手一つで育て上げた一人息子が独立して家を出てからは、さらに仕事漬けになったという。一人暮らしの在宅ワークでは、体を動かすこともなく、生活リズムも崩れてくる。

「子どもの頃から運動音痴で、体を動かすことが苦手でした。そんな私が2年前の転倒を機に、体力がなければF1観戦は続けられないと悟って、本気で体力づくりに取り組もうと決めたんです」