記憶力に自信が
亡き夫は学究肌で歴史好きだった。本棚には勉強家だった夫が遺した辞書や歴史書、中国文化の書籍が並んでいる。
「夫は、『お父さん、これなあに?』『どういう意味なの?』と尋ねたら、何でも答えてくれる人でした。正解かどうかはわかりませんが(笑)、私は質問するだけの人でいられたんです」
そんな頼りがいのある夫はもういない。マユミさんは初めて、自分だけの力で中国語をものにしようと決めたのだ。
「一人になって、やっと自立したというところでしょうか。でも、あの時テレビで中国ドラマを見ていなかったら、アレンに出会っていなかったら……。鬱々と過ごしていたでしょうし、新しいことにチャレンジする勇気も持てなかったでしょうね」
独学で中国語を学びながら、ファンサイトに中国語で書き込みをしてみる。すると、現地の人が文言を修正してくれ、こんな言い方もあるよと本場の中国語を教えてくれる。そんな交流が楽しくて、ますます勉強に身が入る。最近は、語学の上達を実感し、記憶力にも自信が持てるようになったそうだ。
「朝7時に起きてからの2時間が私の推し活タイム。歌手でもあるアレンの歌を聴きながらストレッチをして、ファンサイトをのぞき、ユーチューブを見て、中国語の勉強。1日を気分よく、前向きに始められます」
世界と繋がっているから、一人でもまだまだ頑張れる。充実した日々を謳歌しているマユミさんは、心からそう思うのだ。
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「推し活」が契機となって、若かりし頃の創作意欲が蘇ったミキさん。「推し活」を続けるためにトレーニングに励み、脚力を取り戻したカナコさん。「推し」の存在が、世界への扉を開くきっかけとなったマユミさん。
たしかに「推し活」には、体や脳を活性化させ、若々しさをもたらす力がありそうだ。