私は寝た後、いつもこんな顔をしているのかと思ったら、全身麻酔を受けるのが不安になってきた。路上で意識不明になるのもなんとか免れたい。まして万が一、どなたかと「今晩、一緒に……?」と誘われても断固ご辞退させていただくつもりだ。誘われないとは思うけど。

そういえば、『エゴイスト』という映画に出演したとき、寝顔を撮られたことを思い出す。ロケバス事件の前である。そのときは不治の病に侵されたお母さん(五十代後半)役だった。病院のベッドに仰向けに寝て、見舞いに来てくれたイケメン青年、鈴木亮平氏の気配に気づいて目を覚ますというシーン。そのときはまあ、病床の身であるし、きれいに撮っていただく必要がなかったので納得していたが、あのババア顔を鈴木亮平さんにずっと見つめられていたかと思うとゾッとする。

寝ると口角が下がることを教えてくれたのは、松岡修造氏である。

「僕は、寝るときはあえて笑顔を作って寝るようにしています」

しかし笑顔をキープするには筋力を要する。だんだん疲れてくるのでいつしか眠りに落ちる。「おかげでよく寝られるようになりました」と松岡さんはおっしゃったが、つまり寝ている間は口角が下がるということだ。若い頃は脱力しても口角が下がらなかったのだろうか。それとも口角が下がっても愛らしい顔を保つことができたのか。