森下さんからも「可哀そうすぎる」と

森下さんの脚本は、膨大なキャストがいるのに、どのキャラクターも“立っている”ところがすごい。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

『べらぼう』も、シリアスが根底にあっても、ストーリーそのものは明るいノリでリズムよく進んでいくじゃないですか? その二つが並行して走っているのを見て、あらためて驚かされます。

佐野政言については、森下さん自身「可哀そうすぎます…」って仰ってたらしく(笑)。

まあでも、ここまで可哀そうな人を演じたことはなかったので、とことんそう見えたらいい、と僕自身も思って演じていました。

死後に<世直し大明神>と呼ばれるようになるなんて、生前の政言は考えたこともなかったと思います。ただ、この作品の中だけで言えば、辛い人生ではあっても、後世に名前が残って少しはよかったのかなって。

台本を最初にもらった際には、「当初は“ヒール”に見えても、最後には自らの正義を貫いて、悪い田沼意知を斬りに行く」なんて展開を勝手に想像していました。

でも実際には「世の中のシステムに板挟みになって、すっかり壊れてしまった結果」だったわけで、こんな展開になるとは全く予想できませんでした。ここまで哀しい話を作り上げてしまうんだな、これが森下マジックなんだなって。