森下さんからも「可哀そうすぎる」と
森下さんの脚本は、膨大なキャストがいるのに、どのキャラクターも“立っている”ところがすごい。
『べらぼう』も、シリアスが根底にあっても、ストーリーそのものは明るいノリでリズムよく進んでいくじゃないですか? その二つが並行して走っているのを見て、あらためて驚かされます。
佐野政言については、森下さん自身「可哀そうすぎます…」って仰ってたらしく(笑)。
まあでも、ここまで可哀そうな人を演じたことはなかったので、とことんそう見えたらいい、と僕自身も思って演じていました。
死後に<世直し大明神>と呼ばれるようになるなんて、生前の政言は考えたこともなかったと思います。ただ、この作品の中だけで言えば、辛い人生ではあっても、後世に名前が残って少しはよかったのかなって。
台本を最初にもらった際には、「当初は“ヒール”に見えても、最後には自らの正義を貫いて、悪い田沼意知を斬りに行く」なんて展開を勝手に想像していました。
でも実際には「世の中のシステムに板挟みになって、すっかり壊れてしまった結果」だったわけで、こんな展開になるとは全く予想できませんでした。ここまで哀しい話を作り上げてしまうんだな、これが森下マジックなんだなって。