紫野源水 桜

世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし──
陽に透けて光る桜の花を有平糖に

爛漫と咲き誇る桜の意匠が和菓子店に溢れ出す季節。桜餅や桜のかたちの生菓子、可愛らしい干菓子などは、目に口に福をもたらし、お茶の時間をさらに幸せなひとときにしてくれます。

紫野源水の「桜」もまたそんな菓子の一つ。有平糖(ありへいとう)で作られた繊細な細工菓子で、透明な桜のかたちにはまるで花の精が宿っているかのよう。有平糖はポルトガルから伝わった南蛮菓子の一種、茶の席で尊ばれる砂糖菓子です。

口に入れると品の良い甘さが広がり、そのあとほどけるように崩れます。上質の砂糖を用いたその味わいは、すっきりと澄んでおり、ストレートの紅茶やお薄など、いつもより少し特別なお茶を丁寧に淹れたくなります。

どこかで見た花を思い出しながら一服、あるいはこれから訪ねたいあの花を思いながら一服の伴に。