敵を作らない

テレビの世界では、前面に出てくる人が必ずいます。例えばバラエティ番組なら、多くのケースで、メインの司会者は1人でいい。目立ってカッコいいのも1人でいい。

ところが、「メインを食ってやろう」と考える人もいます。しゃしゃり出ようとする。こうなると、必ずぶつかります。それこそ勝負になる。

それもまた番組としては面白いのかもしれませんが、僕にはそういう生き方は合っていませんでした。でも、だからこそ40年も芸能生活を続けてくることができたのかな、と今は思っています。

例えば、先にも紹介した『THE夜もヒッパレ』では、司会が三宅裕司さんで僕はサブの役割でした。

台本があって、三宅さんがそれを元に番組を進めていくわけですが、そこに食い込もうとはまったく思いませんでした。

僕がやっていたのは、三宅さんがやらないことをすることでした。

例えば、三宅さんが話題を振らない人に話題を振っていく。あるいは、声をかけてほしそうなゲストや、緊張していて硬くなっていそうなゲストを見つけて、話を振っていく。

そうすると、案外、面白いコメントが出てきたりするのです。

ところが、番組で放映されるのは、その面白いコメントだけです。僕が話を振っているシーンは映らない。

だから、こんなことを言われたこともありました。

「あのヒデというのは、何をやってんだ。自分を出さないね」

でも、僕には不満はありませんでした。

番組を盛り上げることができていたし、面白いコメントができた人にも喜んでもらえていたのです。

もちろん、敵もできませんでした。