2月17日午前の衆議院予算委員会で、安倍首相は立憲民主党の辻元清美氏にヤジを飛ばしたことについて謝罪。辻元氏は、「立法府への謝罪と受け止めた」と述べた(イメージ/写真提供:写真AC)
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、「不規則発言」について解説します。

ヤジは国会の華。だが、総理が飛ばすと大ごとに

文字で見ただけだと「何か言い方を間違えたということかな?」と思う人が多いかもしれないが、国会での「不規則発言」とは、「ヤジを飛ばす」ことだ。

最近も、2月12日に安倍総理が立憲民主党の辻元清美議員の質問に対し、自席から「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばしたことが問題となり、5日後に謝罪。さらに3月2日の新型コロナウイルスをめぐる参院予算委員会で、高齢者対策が不十分だと指摘した立憲民主党の蓮舫議員に、自民党の松川るい議員が「高齢者は歩かない」とヤジを飛ばし、議論が紛糾。松川議員は審議終了後に謝罪した。

安倍総理はこれまでもたびたびヤジを飛ばしているが、総理が自席からヤジるなど、過去にほとんど例がない。唯一にしてもっとも有名なのが、吉田茂元総理。自席で「ばかやろう」と呟いたことが引き金になって、衆議院の解散・総選挙が行われたことからも、いかに総理のヤジが問題となるかがわかる。

一方で、昔から「ヤジは国会の華」とも言われている。ユーモアの利いたヤジは、殺伐とした議場内の空気を一気に和らげる効果もあるからだろう。

「名ヤジ」として今も語り継がれているのが、保守合同(自民党結成)の立役者だった三木武吉(ぶきち)の一言。戦前のことだが、「ダルマ」とあだ名されていた高橋是清蔵相(のち総理)が演説で「陸軍10年、海軍8年」と述べた途端、「ダルマは9年」(達磨大師は壁に向かって9年間座禅を組んだ逸話から)とヤジを飛ばし、議場内が爆笑に包まれたという。それに比べると、どうも、最近のヤジはレベルが低いね。