のぶと嵩がうらやましい
<終戦後の八木は、戦友だった嵩の人生相談に乗るだけでなく、のぶの悩み相談にも応じていた。第87回では、嵩に対し、「俺の屋台には人生相談所の看板が出ているのか」と言いながらも親身に話を聞いていた>
八木は一見ツンケンしているけれど、言っていることは意外と正しい。のぶも嵩も、八木が一番自分たちのことを見てくれていると分かっているからこそ頼る。八木も「来るな」とは言いませんから、2人とのバランスがいいのだと思います。
のぶと嵩の夫婦を見ているとうらやましいです。嵩はずっとのぶを好きだった。純愛ですよね。それに勝るものはないと思うんです。当時はお見合いが多かっただろうし、のぶの母親の羽多子さんのようにお見合いで結婚して、それから愛を育んでいくという形もあった。
でも、嵩のようにあんなにずっと思っていた恋が成就したというのがいちばんいいですよね。何をやるにしても、お互いのことを分かりあっている。そこから恋愛がスタートしていくって毎日ドキドキしますよね。見ていてほほえましい、誰もが応援したくなる夫婦じゃないでしょうか。
のぶ役の今田美桜さんとはCMでも共演中ですが、『あんぱん』の現場では、その話は一切しないようにしています。あくまで八木を演じている妻夫木聡でいようと思って、一切CMのことは話していません。
でも、不思議なんです。すべての俳優に言えることかもしれませんが、現場現場で顔が変わる。『あんぱん』の現場では、初めて見る美桜ちゃんの顔をずっとしている。それは、のぶとして成長している、のぶとして生きてきたということなんだと感じています。初めて一緒に撮影したときに「もうのぶだね」と言ったら「えっ」と返されましたけど。(笑)
完全に今田美桜じゃなくてのぶになっている。このドラマが終わったら、本当にまた一皮むけてさらに素晴らしい女優になっているんじゃないかと思います。『あんぱん』が終わった後の美桜ちゃんが楽しみです。