133の国と地域を旅して、625ヵ所もの世界遺産を訪れている写真家・富井義夫さん。40年以上にわたって世界中を巡ってきた富井さんによる、『婦人公論』での新連載「世界遺産を旅する」。第5回は、「グランド・キャニオン」をご紹介します
峡谷に積み重なる地球の歴史

アメリカ
アメリカでの撮影に挑むため、24日間のロードトリップへと出かけました。あちこち撮りながら毎日ドライブ。不思議なことに、アメリカの広大な大地は長時間運転してもあまり疲れません。
夜はバーボン・ウイスキーをちびりと呑んで眠り、朝になれば走り出す。西部劇を彷彿とさせる旅は、大陸の歴史に似合う豪快さがありました。
そうしてたどり着いたのは、アリゾナ州にあるグランド・キャニオン。この峡谷は、20億年前から2億7000万年前までの地層が隆起し、コロラド川の浸食によって露出したものです。
さまざまな化石や鉱物のほか、地震や火山活動の痕跡があるかなど、地層から当時の地球環境を探ることができます。謎を解明する手がかりとして、学術的にも貴重な場所なのです。