戦後の苦悩までも
戦後のシーンで印象に残っている一つが、のぶと嵩がそれぞれ、高知新報の面接を受けるシーンです。津田健次郎さん演じる東海林が面接官で、のぶと嵩が逆転する正義の話をすると、4Kの画面で観るとはっきりわかるんですが、目を潤ませるんです。その津田さんの演技を見て、「東海林自身が逆転する正義を経験したからこそ、すごく強くシンパシーを感じて2人を見守っていくんだな」と思い、そこから東海林のキャラクターが広がっていきました。
<戦後パートになって、世の中の空気が明るくなってからも戦争が残したものは繰り返し描かれてきた。康太は戦地で食べたゆで卵が忘れられず、食堂を開く。岩男の死の経緯をのぶに話せなかった嵩。豪を忘れられずにいた蘭子は戦争の記憶を取材するジャーナリストになる。第127回では、八木が蘭子に戦争で人を殺した苦悩を告白した>
私が今でも同級生たちと親交があるのですが、「今まで親から戦争の話を聞いたことはなかったけれど、『あんぱん』を見て、戦争の話を初めて聞いた」という友達がたくさんいました。親たちが戦争体験に関してはいかに口を閉ざしてきたかを痛切に感じたんです。子どもには明るくて楽しい未来の話をしてきて、戦争の話は閉じ込めてきたのだろうと思うと、それだけ心に刺さっているトゲが深いんだと思いました。
私たちは、戦争の話を聞ける最後の世代。今のうちに、「おじいちゃん、戦争に行ったときにどうだったの?」「おばあちゃん戦争の時にどうしていたの?」と聞いてほしいですし、『あんぱん』が戦争の話をするきかっけになったら本当にありがたいなと思っています。
『あんぱん』を描き終えた今、「本当にこの作品を書かせていただきありがとうございます」という気持ちをやなせさんにお伝えしたいです。やなせさんは出征されて、壮絶な体験をされています。やなせさんの体験、そして詩や絵本などの作品があったから、戦争のことをここまで描くことができました。やなせさんが『あんぱん』を書かせてくださったと思っています。
【放送予定】 毎週月曜~土曜 ●総合 午前8時~8時15分
●総合 午後0時45分~1時00分(再)
※土曜は一週間を振り返ります
<毎週月曜~金曜>
●BS・BSプレミアム4K 午前7時30分~7時45分 ほか
【 作 】 中園ミホ
【出演】今田美桜/北村匠海/加瀬亮/江口のりこ/河合優実/原菜乃華/細田佳央太
高橋文哉/中沢元紀/大森元貴/二宮和也/戸田菜穂/浅田美代子/吉田鋼太郎/竹野内豊/阿部サダヲ/妻夫木聡/松嶋菜々子