人間は他人が得をしていることを知ると、自分が損をしたような気持ちになる。

この連載でも対談させていただいた政治学者、山本圭教授は著書『嫉妬論』(光文社新書)で、そのような嫉妬感情をこう説明している。

「自分が感じる満足の絶対量の多寡ではなく、他人と比較することで生じる不満や欠乏感のことを”相対性剥奪”と呼ぶ。」

幸せそうな他人を見ると、自分と比べて嫉妬をしてしまう。いくら自分自身の幸せだけを追い求めるべきだと頭でわかっていても、知ってしまうとたちまち羨ましくなってしまうのだ。

 

また、精神科医であり脳科学者でもある東京化学大学の高橋英彦教授の研究によると、脳の奥深くにある大脳基底核の一部「線条体」という部分は、自分が得をしたときと他人が損をしたとき、そして、自分が損をしたときと他人が得をしたときに、同じような活動をするということが分かった。そのため脳はそれらをうまく区別できないのかもしれない。

つまりドイツのことわざ「シャーデンフロイデ(他人の不幸は蜜の味)」は、脳の仕組みでもあるということだ。

では私はその逆を、他人の幸せは塩の味とでも言おうか。しょっぱいし、摂りすぎると血圧が上がって体を壊す。