彼の覚悟が目に焼き付いて

結婚から1年後、マコトさんは亡くなった。

「闘病の日々だった夫婦生活の一番の思い出が、遺影撮影会への参加でした。あのとき私は彼の覚悟を見たような気がしています。思いきり明るく、なんのてらいもなく撮影に臨んでいた姿が、目に焼き付いているんです」

妻として夫を看取ったあとは、喪主の立場で葬儀を仕切った。初めて会うマコトさんの姉や姪たちと相談して、マコトさんの実家の菩提寺に納骨し、仏壇も引き継ぐことに。

「彼の実家のことはまったく知らなかったし、付き合いのなかった親戚とどんな会話をしていいかもわかりませんでした。結婚式もしていないので、彼の親族も、私とどうかかわりを持つべきか悩んだでしょうね。すべては、彼を看取ってから初めて経験することばかりでした。結局、位牌は菩提寺に預け、仏壇は供養して廃棄しました。手元に残したのは一緒に撮ったこの写真だけ」

遺影撮影会は、死を意識したマコトさんと過ごした濃密な時間だった。その思い出が2人の生きた時間の証しとなり今も支えてくれている、と遺影を見つめながら話すマナミさんだ。

2につづく

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【ルポ】終活に取り組んだら、今が輝き出した
 (1)「遺影撮影会」~マナミさん(66歳)の場合
 (2)「ペット共葬墓」~サヤカさん(65歳)の場合
 (3)「死ぬまでにやりたいことリスト」~ユリエさん(50歳)の場合