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終活は、自分の死後を考える悲しい作業とは限りません。本心と向き合う時間が、今を生きるための支えになることも。実際に準備をしたという、3人の心情は――。

パートナーの願いに心が揺らいだ

離婚後、雑貨の輸入事業を立ち上げ、社長業に奮闘していたマナミさん(66歳・仮名=以下同)。8年前、久しぶりの中学の同窓会で、同じクラスだったマコトさんと再会、すぐに意気投合したという。

「彼は事業を廃業したばかり。独身で完全フリーだったので、これ幸いと私の会社を手伝ってもらうことにしたんです」

はじめは人手不足解消のためだったが、だんだんと気のおけない相棒になっていった。2人で住むマンションを共同購入して《新婚》生活が始まった。

「結婚はもうこりごりだったので、仕事上のパートナーのような、事実婚のような関係が心地よかったですね」

そんな関係が揺らいだのは、ともに生活をはじめて2年が過ぎたころ。定期健診でマコトさんにステージ4の大腸がんが見つかったのだ。

「離婚以来シングルマザーでがんばってきて、やっと頼れるパートナーと出会えたのに……。顔には出さないように努めたものの、ショックでした」

病院での検査に毎回付き添っていたマナミさんだったが、主治医から治療方針の説明を受け、さまざまな同意書にサインする段になって、法的には婚姻関係にないことが壁となった。マコトさんには姉がいるものの、そりの合わない姉には頼みたくないという。