森永卓郎(もりなが・たくろう)
1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。経済アナリストとして、テレビ・ラジオなど多くのメディアで活躍。『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』『がん闘病日記お金よりずっと大切なこと』など著書多数。2025年1月28日死去。享年67/B宝館には、森永さんの等身大パネルも(撮影:藤澤靖子)
経済アナリストとして活躍し、お茶の間でも親しまれた森永卓郎さん。2023年末に末期がんで余命宣告を受けたことを公表しました。今年1月、惜しまれつつも亡くなりましたが、妻・弘子さんによると、「本人はまったく死ぬつもりがなかった」のだそうで――(構成:山田真理 撮影:藤澤靖子)

前編よりつづく

仕事を続けるために中止した抗がん剤治療

それが2023年の初夏、仕事先から電話があって、「背中が痛いから、夕方でも診てくれる医者を探して」と。夫には尿路結石の持病もあり、それかなと思って駅前の内科クリニックで診てもらいましたが、はっきりしたことはわからない。

紹介状をもらって週末に近くの総合病院を受診したものの、その頃には痛みは引いてしまった。「詳しい検査を受けるには予約を」と言われた夫は、面倒くさくなっちゃったんでしょう。「もういいよ」とそれきり病院に行かなくなってしまいました。

でもその時にはすでに、夫の身体の中で異変が起きていたのです。同じ年の10月、糖尿病の定期健診を受けたクリニックで「体重が減りすぎている」と指摘され、念のために受けた人間ドックで「膵臓がんのステージ4、来年の桜は見られないかもしれない」と告げられました。

私はショックで動揺しましたが、本人は案外、「ああ、そうなの」という態度。淡々と、いつもの仕事に戻っていきました。