希望を書き出すと腹の底が熱くなる
死が身近になり漠然とした不安を感じていたとき、小谷みどりさんの『〈ひとり死〉時代の死生観―「一人称の死」とどう向き合うか』という本に出合った。その中の、「死ぬまでにやりたいことリスト」という一節に目が留まる。さっそくペンを持つと、リスト作りに夢中になった。
「やりたいことを書き出しているうちに、なんだか楽しくなって。一度完成させても、途中で気が変わったら追加しても取り消してもいいという、自由自在なところも気に入りました。何より、リストを書いていると、お腹の底が熱くなるような不思議な感覚を覚えたんです」
〈バイトでリゾート地をはしごする〉〈生活の拠点を複数持つ〉〈晴耕雨読の毎日を過ごす〉……、思いつくまま書き出していると、やりたくないことも思いつく。〈義理の呑み会はお断り〉〈満員電車には乗らない〉〈愛想笑いはしない〉……。
「もともと計画を立てるのは好きでした。元旦には毎年のように一年の計を立てています。ただ、そのときの計画は、『資格を取る』『語学の勉強をする』『資金を貯める』など、やらなければいけないこと、すべきことの羅列だったと気づいたんです」
「自分が死ぬまでに」という前提があると、資格も資金も関係ない。シンプルに自分が心地よいと思うこと、自分が好きなことを見つければいいのだから。
「リスト作りは、自分を大切にすること、自分を好きになることだったんですね」