鎌田 私自身、ある時数えたら自宅に本棚が23本もありました。「これが倒れてきて死んだら、地球科学の専門家として洒落にならない」と気がついて、一部屋を書庫にできるマンションに引っ越したのです。

本棚はすべて固定し、ほかの部屋も作り付けの家具にしました。自宅の防災は、まず家具の転倒と落下物を防ぐこと。ほかには数日分の水と食べ物、簡易トイレ、電池や発電機など電源となるものも大事です。

岸本 最近の住宅は電化が進んで、トイレもお風呂も電気がないと使えないですものね。

鎌田 ただ、自宅の防災備蓄も、完璧を目指さないことが大事だと私は思っています。《災害ユートピア》という言葉があるのですが、被災した地域では人々の助け合いが活発化するのです。それこそ、水や食料に困っている人がいたら、「うちにあるから、どうぞ」と隣近所と交換したり、シェアし合えばいい。

岸本 私の住むマンションでは、災害が起きた時に「私は無事です」と書いて、玄関ドアに貼り出すための用紙が配られました。最初は何の意味があるのかと思ったのですが、「X号室の住人は無事だ」と知らせることで、救助する人がほかの場所に移動して、別の誰かを助けられるのだとわかって。一人で完結せず、情報も周りとシェアすることが大事なんだと思いました。

鎌田 非常に重要なポイントです。大きな地震が起きたら、まずは自分が無事ということを家族に知らせることが大事。一人暮らしのシニアであれば、近所の人や担当のケアマネジャーなどに伝えられるといいですね。

災害時には通信が集中してスマホや携帯がつながりにくくなりますから、「災害伝言ダイヤル」などを一つの連絡手段として活用するといいでしょう。

岸本 そうしたサービスの使い方も練習しておかなくては。