重松 本の装幀については、デザイナーやイラストレーターも頑張っている。それを思うと、いわゆる“ジャケ買い”もOK。
芦田 ジャケ買いはけっこうします。「こんな話なのかな」と、見た目から想像するのも好きです。本のカバーも帯も全部とっておきますよ。処分すると、本の命を削いでしまう気がして。
重松 「本と出会う」のは、作品や作家だけではなく、書店さんや印刷会社の人も含め、「いいものをつくろう」と関わってきた人の思いとも出会うこと。愛菜さんにはこれからもいい出会いをたくさんしてほしいし、そのなかに僕の本があると、なおいいな。(笑)
芦田 重松さんの作品に出会ったのは小学生の頃。初めて読んだのは『小学五年生』で、『きよしこ』『一人っ子同盟』など、たくさん読ませていただきました。もちろんこれからも。(笑)
伊藤 今はどんな本を読んでいるのですか?
芦田 最近は外国の古典に興味があります。ダンテの『神曲』を読み始めたのですが、難しくて途中で挫折しました。そんな自分が恥ずかしくて。背伸びしすぎたかなと。
伊藤 そんなことはない。私も同じ経験がありますよ。中1のとき、北杜夫がエッセイに書いていたドイツ文学に惹かれて、ゲーテの『ファウスト』 を買ったんです。制服のポケットに入れて、毎日読むんだけど、難しくてわからない。上・下巻のうち、上巻だけボロボロになったあげく、途中でギブアップです。でも何年かのちにチャレンジし、最後まで読みました。
重松 時を経て読み直したら、今度はするっと頭に入るかもしれない。読み通せなかったものも含めて出会いだし、何度も出会い直してほしいですね。
おしゃべり余話
「検索」とは違う魅力
芦田愛菜さんと伊藤氏貴さんが口を揃えておっしゃったのが、本とは「出会う」もの――。それって、友だちや愛するパートナーと同じなのかも。ターゲットを絞り込んだ「検索」とは違う、空振りや回り道をも含めて楽しめるのが出会いの魅力なのです。
それにしても、ほんとうに聡明で「本が大好き!」をまっすぐに伝えてくれた愛菜さんを前にした50代の伊藤さんとシゲマツ、なんかもう、デレデレでしたね……。(笑)