講習会のための布草履作成キット(左)と、完成品(右)

会の黎明期を知るメンバーの一人で、その活躍ぶりから「会の宝」と呼ばれているのが、九條邦子さん。(82歳)

「私たちの合言葉は『もったいない』なんです。回収した着物は隅々まで点検して、着られるものは補修してアイロンがけ。ダメなら洋服にリメイクしたり、端切れは小物や、裂いて布草履の材料に。それでも余る小さな布切れは油拭きに使って、1センチたりとも無駄にしません」

九條さんが活動に関わったきっかけは、地元のマンション内の主婦の集まりだ。同じマンションに住んでいた「ファイバー」の当時の代表・畑山文恵さんが、リサイクル活動で引き取った着物を新たに活用するために、九條さんを含む地元主婦数名に声をかけたのだ。

畑山さんは九條さんよりひとまわり以上歳下。声をかけた理由について、「今は浴衣のたたみ方もわからない人が多い。この世代の皆さんは着物に親しんでいるし、何よりマメで、器用ですから」と言う。

「ファイバー」への参加を決めた九條さんは布草履作りを習いに行く。作り方をマスターすると講座で講師役を担い、そこに友人知人が参加し、仲間が少しずつ増えていった。
「布草履はこれまでに1600足ぐらい作りました。数をこなしているうちにどんどんうまくなるし、楽しくなるんですよ」