難聴で認知症発症リスク倍増も
続けて、「難聴は認知症の発症率を上昇させることが研究で分かっている」といいます。難聴を放置すると、10年後の認知症発症リスクが倍になるという研究報告があるというのです。また、難聴があると聞き取りに労力がかかり(リスニング・エフォート)、余分な脳の力を使うので、従来は記憶などの認知に使っていた脳の力が減少し脳神経の容量にも影響が出るという「認知負荷仮説」が、難聴と認知症の関係を示唆しているとの説明がありました。
水足さんは「難聴が進むと脳全体の機能に低下が見られ、運動機能の低下、最終的には社会的な孤立につながります」と警鐘を鳴らし、「難聴を放置してはいけない」と訴えました。補聴器は認知症の進行を遅らせる一つの手段になるのです。
補聴器は残された「聴く」力を補う器械。難聴者の方が補聴器で音を大きくして聴くことには意味があり、補聴器を使う利点としては、会話の聞き取りを楽にすることができること、会話音以外の音の聞き取りができることが挙げられました。
では、補聴器をどの段階で使用すればいいのかというと、「静かな会話も“ある程度”聞こえている、軽度の難聴でも補聴器の使用を」と水足さんは勧めます。聞こえにくくなる70~80代では「補聴器なしで社会生活を送ると、認知機能の低下や社会的孤立が危惧されるようになるのです」とのこと。広く補聴器を使用して欲しいと呼びかけました。
また、日本の補聴器使用の現状について、他の先進国に比べて補聴器の使用率が15%と極端に低いといいます。また、聞こえに不便さを感じるようになってから補聴器を使うまでに平均7年もかかっているというデータもあるとのこと。
水足さんは「補聴器を早期に使用することで、脳の知識力の低下が抑えられるという研究報告も出てきています。難聴に悩んでいる方は、いち早く補聴器を使ってもらい、周囲に合わせた“作り笑い”ではなく、“本当の笑顔”で毎日を過ごして欲しい」と訴えました。