苦悩を持つ人に寄り添えるように
自身が補聴器を使うきっかけとなったのが、樋田さんが受け持ったクラスに“場面緘黙”(大人数の場など特定の場面では話せなくなる)の子どもがいたこと。「その子が勇気を持って話そうとしてくれているのに、声が小さくて自分が聞き取れないことがとても苦しかった。ほかの先生はその子の声が聞こえていたのに」と、当時の苦悩を振り返ります。また、樋田さんの妻や子どもにもコミュニケーションで迷惑をかけられないと思い、その翌年、33歳の時に補聴器を使うように。
補聴器を使用して「〈脳が疲れない〉という実感が湧き、コミュニケーションが取りやすくなった」という樋田さん。「これまでは大勢の人との会話を避けていましたが、今は比較的楽しめるようになった」そう。また、難聴者の立場から他人に寄り添えるようにと、仕事場の小学校では声が聞こえにくい子のフォローを図り、自信がない子達の「安全基地」になれるよう心がけていたそうです。